ラッカパン


フンフンフーン♫


自転車に乗って軽快に走る。

春と夏の間を全身で浴びている感じ。


車道、少し前を走る女性のスピードもちょうどいい。一定の間隔をあけて同じ方向へ進んでいく。



「あっ」



ポス。

 



キーッ! 


キーッ。



二台の自転車がブレーキ音を響かせる。

女性のカゴから紙袋が落ちた。



紙袋の目の前で止まれたので、スッと拾い上げ、駆け寄る女性に手渡す。



「どうぞ」


 

「あ、ありがとうございアアアアア゛ー!!」



「アアアアア゛ア゛ー!!!」



ポスポスポスポスっ。




落下するパン。



…。


そのとき時間が止まった。






春のパンまつりとはこのことだったか。